二十世紀 三 嶋 善 之
過去の道は白く乾いて
はば広く直線で
ゆるやかな山のふもとの
遠くの一軒家から
夕餉の煙が出ている
お風呂が沸いている
かまどの菜っ葉も煮えて
板の間の三毛猫が背を伸ばす
この家の子供たちは数学が得意
素直で丈夫
お盆には必ず帰ってくる
どんなに離れていても
なつかしい父母の暖かい家めざして
気球に乗って帰ってくる
どうしても帰れないとき
夢の中に現れる
それでも
父母はうつむいて
いつものとおり
おだやかな川で鍬を洗い
無言で迎え火を焚く
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