2012年9月29日土曜日

新詩集5


理科 

 

理科が好き


今日はホルモン

誰かが「ホルモン焼」とささやく

町のはずれに最近開店した

「ホルモン焼」

どんな焼きものか

 

「ホルモン焼」「ホルモン焼」

静かにせんかおまえら

 

先生は黒板に「ホルモン焼」と書き

あららと言って消す

 
 

理科 

 

電気分解

目が悪いおばあちゃんのタバコ屋

メッキの十円でタバコを買った生徒

先生は警察に呼ばれた

おばあさんをだますなんて

おまえたちは人間じゃない

先生は十円硬貨にメッキしたから

警察に呼ばれたんです

硬貨を偽造しただけです

 

おまえたちは人をだました

 

 
理科 

 

先生はアルコールを撒く

アルコールが燃える机は燃えない

いいですか点火します

こげくさい

先生、机が燃えています

あれほど説明したのに

このクラスは聞いていない

先生は怒る

 

火事だ火事だあ

先生は消火器を取りに走る

 

なぜ机が燃えたのか

先生は判然としていない

 
 

理科 

 

竹筒にカーバイト

ぽんとかわいい音

 

猿にはすこし太い竹

山奥の生徒が遅刻した

赤ら顔のじいさんと太い竹

 

いのしし用だ

ボウリングの玉でも飛ぶ

 

じいさんは孫が大好き

孫の代わりにいつでも死ぬ

覚悟ができている

 

カーバイトをコップ一杯

轟音でガラス窓が割れた


窓から校長が顔を出す

山奥の生徒はシンガポール工場へ技術指導に

その朝

じいさんは我慢できず

死んだ

 
 

理科 

 

標本室の人体模型大好き

腸も肺も取外しができる

生殖器もはずす

 

あれれ、ない誰か知らないか

 

使い方を誤ると大変

叱らないから出しなさい

 

みんな目を閉じて

さあ誰も見ていない

こら早く出せ

突然こわい声

 

薄目を開けると

みんな目を開けて

かたく目を閉じて怒っている

先生を見ている

 

 

理科 

 

先生の親は

戦争で亡くなった

家は土建屋

ダンプで砂利を運んでいる

 

はちまき

はらまき

 

ダンプで家庭訪問

するからすぐにわかる

 

ストライキの朝

スト破りに間違われた

 

砂利を積んだまま

学校へ行ったから

 

理科 

 

病気で入院中の村人に頼まれ

先生は牛を売りに行く

ダンプに載せて


 
牛は割と高く売れた

風が吹いて

ダンプの窓から

一枚また一枚

お金が外へ跳んでいった

 

左手で押さえ

やがて土手を斜めに

川の中までダンプは降りていく

 
先生は川に入り散らばったお金を拾い

病院へ駆けつける

金を渡して

 
ついてに自分の頭にも

包帯を巻いてもらう

 

 

理科 

 

校長室の掃除当番

雑巾もっとしっかり絞らんか

校長はバケツに砂を入れて

廊下に立っていろという

なぜだわからない

ベルが鳴る

お前少しは反省したか

ああんどうだ

教室へ戻れない自分が

情けない

すると

先生がやってくる

お前何をやっている

こんなところでサボってないで

早く教室へこい

 

この砂はどこに敷くのだ

猫のトイレか

 
 
理科 9

 

理科の先生は

正義の味方 長生きして欲しい

まだダンプに乗っているらしい

信号無視でつかまったらしいから

0 件のコメント:

コメントを投稿